RDS(on)のみで効率的なFOMが保証されるとは限らない

MOSFETを選ぶ際、多くのエンジニアが注目するのはRDS(on)の値です。それは、RDS(on)の値は低いほど望ましい、という考え方が広く流布しているからです。もちろん、RDS(on)がMOSFETの選択時に重要なパラメータであることに変わりはありませんが、それだけでは全体像が分からないスイッチング・アプリケーションも増えています。実際、MOSFETのスイッチング・パラメータによってはRDS(on)の値がやや高めのほうが効率と性能において有利なアプリケーションもあります。

NexperiaではMOSFETのスイッチング性能におけるQrrの影響を調べてきました(Qrr:効率競争で見過ごされ、過小評価されているパラメータ)。その結果、従来型MOSFETの性能指数(FOM)の正しさに疑問の目が向けられるようになりました。現在一般的に受け入れられているMOSFETの性能指数はまだ通用するのでしょうか?

アプリケーションのスイッチングが高速化し、性能と効率が向上するにつれて、スイッチング損失(QgとQrrの組み合わせ)とスイッチング周波数がMOSFET全体の性能と効率に大きな影響を与えるようになってきています。そのため、設計者がMOSFETを選ぶ際は単純にRDS(on)のみを比較するのではなく、もう少し深く掘り下げる必要があります。RDS(on)のみに最適化されたデバイスが存在することは明らかですが、今日のシリコンMOSFET技術の限界を考えると、それによって他の性能値に悪影響が出てしまうことが多いのも事実です。

NextPower 80/100V――小型化と高速化、優れた冷却性能を実現

NexperiaではLFPAK56に封止されたNextPower 80/100V低Qrrデバイスの製品ラインナップを拡張して新しいLFPAK88パッケージ製品を導入し、電源、電気通信、産業用の設計に従事するエンジニアの選択肢を増やしています。これらは低ボディ・ダイオード損失(Qrrは50nC以下)、低逆回復電流(Irr)、低電圧スパイク(Vpeak)を特長としており、リンギングが低減するためデッドタイムが最適化されます。同時に、RDS(on)も最低限に抑制されます。さらに、従来製品から表面実装のLFPAK封止デバイスに切り替えることで、TOLL(TOリードレス)パッケージと比較して50%以上のフットプリント削減を実現するだけでなく、全面銅クリップ技術のメリットも加わります。

EMC問題を回避

現在、MOSFETを使用する設計における最も顕著な問題はあまり注目されていませんがEMCであると言えます。その一つの指標として、RDS(on)とスイッチノードのスパイク電圧を比較する方法があります。一般的なDC/DCまたはAC/DC電力変換は70~130 kHzの間で行われますが、Nexperiaは広範なテストを実施する中ですべてのLFPAK56(E)製品を100 kHz~500 kHz(LFPAK88は100~300 kHz)に引き上げました。

NextPower 80/100V――スパイクと効率で業界をリード
NextPower 80/100V――スパイクと効率で業界をリード

その結果、100 kHzにおいて、NextPower 80/100Vデバイスは流通している製品で最も低いスパイクだけでなく業界最高水準の効率を達成しました。そのため、損失を最小限に抑えながら効率的なスイッチングを確保し、コスト増を招く基板再設計をせずに確実にEMCテストを通過する設計が可能になります。

インタラクティブなデータシートを参考に

パラメータ間の相互作用が複雑化すればするほど、当然ながらRDS(on)などの単一のパラメータのみに焦点を当てたくなります。Nexperiaでは電熱モデルとインタラクティブなデータシートを提供することでエンジニアの思考プロセスを単純化し、製品が特定の設計仕様の中でどのように動作するかを素早く理解できるようにしたいと考えています。 

詳しくはNextPower 80/100Vファミリのページをご覧ください。